残された者。

 一緒に死ねたらいいな。残された者にとって現実を受け入れるのはつらい。悲しすぎる。人生においてとてもショックを受ける出来事の1位は、「配偶者の死」だそうだ。もっと、ありがとうって伝えていればよかった。もっと優しく接してあげればよかった。そう思っても、もう、いない。

 いつかはみんな死ぬ。その順番が、こうなっただけ。いずれ私も死ぬ。わかっている。だけど、あの人がいない日常なんて耐えられない。これ以上生きていて、なんの意味があるのだろうか。早く死にたい。

 そう思うかもしれない。

 

 どうやって、思いとどまるのかしら。生きる意味を、そこから、どう見出すのだろうか。きっと、あの人がいたら、早まってはいけないというだろう。だから、あの人を悲しませないために生きよう。・・・と、思うだろうか。

 必ず来る別れを、どう乗り越えていけばいいのか。

 

 顔を洗う。あの人が使っていた化粧水がある。水を飲む。あの人は喉が痛むからと、冷たい水は好まなかった。私が元気がない時は、ケーキを買ってきてくれたことがあった。今日も暑いねえ、夏らしいなあ。と言っていた。

 私が行く先々で、あの人が待っている。ぴょこっと顔を出してくれるのではないか。ああ、仕事が遅くなってねえ、ごめんねえ。と言ってくれるのではないか。

 

 あの人のために、かわいく居続けたい私は、見るからにかわいくない私だ。もう、かわいくいてもしようがない。見せたい人はいないのだから。

 悲しいだけの毎日は、ずっと続く。それを、どう、生きるのだろう。いつ、かわいい世界になるのだろう。