夏祭りと花火。理想の家族。

 また、祭の季節が来た。夏祭りと花火。
 今までは、ワクワクして楽しみなイベントだった。どこの祭に行くか。ステージの出演者を調べたり、ルートを調べたり、近隣の施設を調べて、日中から祭の翌日まで楽しむプランを考えるのが楽しかった。浴衣も新調したかったから、いろんなお店を見て回ったし、小物や髪型もどうしようかと迷うところから楽しかった。
 学生の頃は、お小遣いでやりくりしながら屋台を楽しんだ。友達がバイトしている屋台を冷やかしに行った。社会人になってからは、大人パワーで、祭会場の近くのホテルに宿泊したりして、のんびり過ごした。

 楽しみな夏のイベントだった。だけど、一変した。もう、今は辛い。

 楽しそうな人達を見るのが辛いのだ。私は、もう、あんな風にはしゃげないだろう。楽しめないからだ。
 友達とキャッキャ言いながら、歩いている学生。親に屋台のゲームをしたいとねだる子ども。ビールを片手に楽しそうな人達。浴衣デートするカップル。みんな楽しそうな夏の一幕なのだ。

 そんな人達を横目に、私は一人で部屋にいる。そんな気分にはなれないことを知っているから。夏祭りが終わるのをじっと待つ。本当は、夏祭りを楽しみたいのに。
 祭の放送。盆踊りの音楽。屋台の香り。花火の音。煙のにおい。早く終わってと思いながら、やり過ごす。

 それらが全て幸せの証だと、ありありと思い知らさせている。私は、そこに行けない世界なのに。すぐ隣にあって、笑顔で通りすぎていく。パレードみたい。
 キラキラ。輝いている。私は、そうじゃないと思い知らさせている。キラキラが楽しそうで、よけい私が落ちていく。

 夏祭りは、そんな時間なのだ。

 また、キラキラの世界に戻りたい。