神隠し。

 いたかもしれない。いなかったかもしれない。何だっけ。誰だっけ。記憶がぼんやりしている。そんな感覚。とりあえず、わかっているのは、今ここにはいないということ。

 そんな、ぼんやりとした存在でいたい。ふわふわと自由な。誰の目にも触れない、わからない、でも確かに感じる。

 

 自由になりたいのかもしれない。何のしがらみもなく、何の肩書もない。ひとくくりにされない。女だからって、こんな年だからって、仕事だからって、このポジションだからって、普通だから・・・。

 そんなレッテルから解放されたい。ただ、ひっそりと過ごせたらいい。ああ、ああいう人いたねって言われるぐらいがちょうどいい。

 人づきあいも疲れた。飲み会やら、親睦会など。この人と一緒に仕事をしたいと思われるように顔を売る。ああ、あの人のためならしょうがない、やってやるよ!って仕事が円滑にいくように会話する。それも疲れた。

 

 私がない。盗られてしまった。もともとの私、どこに行ったのだろう。盗られたのか、なくなったのか。わからないけど、小さい私は消えてしまった。

 桃がおいしくて、明日も食べたい!と思ったこと。ディズニーランドでシンデレラを追いかけて一緒に写真を撮ってもらおうと、がんばってアピールしたこと。ベッドにダイブして、ああーーベッドは気持ちい!と思ったこと。

 小さい私はいなくなった。

 

 ここにいるのは?