現実逃避の先。

 あー。どっか行きたい。県外に行きたい。とりあえず飛行機でどっか行きたい。旅行って、そんなワクワクではない。誰も知らない所に行きたい。知らない風景。

 現実にいることに疲れた。ずっと同じ所でぐるぐるしている。

 最近、薬を変えた。以前服薬していたのは、効いているか効いていないかわからなかった。新しい薬も、効いているか効いていないかわからない。まあ、しばらく様子見だけども。

 

 自分探しなんて、20代まで。30後半の私が自分探しなんて、今更何やっているんだろう・・・。もっと前に見つけとけよ、自分。

 確かに、「これしたい!」って夢があった。10代の頃からがんばってがんばって夢が叶った。よかった。でも、その先はなかった。燃え尽きた。これから先の夢。なんだろう。

 

 飛行機乗ってどこかの地に行く。結局、そこでも自分と向き合うわけで。

 

 覚えている。ぐるぐるして、もやもやして眠れなかった。ずっとベッドの中でごろごろしていたけど、結局明け方にはベッドから起き上がった。

 「早起きしたから、モーニングでも行こうよ。」と夫が言った。いつもは午後に行くパン屋さん。高台にあり、眺めが売りなのだ。

 店内は朝一番のせいか、私たち含め2組。窓際の景色がよく見える席に座った。カフェの音楽と、温かいコーヒー。クロワッサン。

 小雨が降ってきた。ああ、せっかくの景色が台無し。早起きして来たのに。いつもは、そう思う。しかし、今回は雨にほっとした。

 暖かい。ざああと聞こえる。窓ではまるい水滴が流れ落ちて。また、流れては落ちる。私は産まれてから何度も雨を目にしているのに。雨の音、雨の姿を知っているのに。

 初めて、暖かいと思った。何かに守られているような。不思議な感覚だった。

 

 暖かい場所。苦しくなったら、ここに来よう。そう思える場所が一つでもあれば、何とかなるかもしれない。